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言語障害 スクリーニングテスト(STAD)

副題:Screening Test for Aphasia and Dysarthria

監修:小薗真知子(熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科言語聴覚学専攻)

著者:荒木謙太郎(創進会みつわ台総合病院リハビリテーション科勤務、千葉大学大学院医学薬学府博士課程)

 

ISBN:978-4-900637-54-2
判型:B5判 
発行日:2018年6月26日

 

●「STAD記録用紙」は別売りです。

本体価格
¥2,700
税込み販売価格
¥2,970
在庫状態 : 在庫有り
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内容

●STAD(スタッド)は脳損傷後の症例に対し、言語聴覚士として求められる、失語症・構音障害・その他の高次脳機能障害を、簡易に短時間でスクリーニングします。

●A4一枚のコンパクト!多忙な言語聴覚士の臨床を支えるテストとして開発されました。

●STAD(スタッド)には、信頼性・妥当性・健常ノルム試験を通したエビデンスが蓄積されており、脳損症例に対する標準化された言語障害スクリーニングテストです。

 

【消耗品】
≫言語障害 スクリーニングテスト(STAD)記録用紙 (30部入)

目次

はじめに

 

第1章 言語障害の全体像をつかむSTADの網羅性
1 言語聴覚療法におけるスクリーニングの位置づけ
2 意識障害下におけるスクリーニング
3 インテーク面接におけるラポール形成
4 STADのアルゴリズム

 

第2章 13項目の目的と採点マニュアル
1 アイコンタクト
2 名前発話
3 見当識
4 構音器官
5 指示理解
6 手指構成模倣
7 構音交互運動
8 復唱
9 数唱
10 物品呼称
11 図形模写
12 名前書字
13 書き取り

 

第3章 STADの臨床応用
1 スクリーニングに先立つ情報収集
2 初診と評価・診断・訓練のプロセス
3 コミュニケーション障害の重症度判定
4 訓練教材の運用の効率化
5 慢性期臨床でのSTAD活用

 

 

第4章 ケースシリーズ
1 症例Ⅰ:軽度意識障害が残存する急性期失語症(発症3日)
2 症例Ⅱ:両側橋損傷による構音障害(発症4日)
3 症例Ⅲ:情動の安定化がみられた認知機能低下例 (発症1ヵ月)

 

第5章 STADの標準化試験
1 健常ノルム算定試験
2 STADの信頼性と妥当性
3 基準関連妥当性
4 STADの中止基準

 

第6章 Q&A よくある質問
Q1 構音交互運動に/pataka/がないのはなぜですか?
Q2 読むモダリティーがないのはなぜですか?
Q3 非言語検査では何をみることができますか?
Q4 非言語検査が満点でも高次脳機能障害があるときがあります
Q5 純粋失読の評価はどうすれば良いですか?
Q6 復唱に短文レベルがないのはなぜですか?
Q7 STADに至るまでの開発過程を知りたい

 

あとがき

 

 

序文

 

 言語聴覚士が国家資格となって20年が過ぎようとしているこの時期に,標準化されたコミュニケーション・スクリーニングテストをお届けできることを心から嬉しく思います.

 スクリーニングテストは,臨床の入り口として非常に重要なものですが,設問がシンプルで誰にでも簡単に作れそうに見えるためか,これまで日本では研究対象としてあまり取りあげられてきませんでした.私自身,長年の臨床の中で,数値化できる網羅的なスクリーニングテストの必要性を感じながらも完成までには至りませんでした.

 「後生畏るべし」という言葉が論語にあります.自分より後から生まれて来た若い人には大きな可能性があり,畏敬すべきものがあるという孔子の教えです.荒木謙太郎氏のSTAD(スタッド)研究に出会ったときの気持ちは,まさにこの言葉そのものでした.荒木氏は臨床2年目から一人でスクリーニングテスト作成に取り組んできました.その成果は第2回日本言語聴覚士協会の優秀論文賞受賞で認められましたが,それから標準化までには更なる年月が必要でした.STADの歩みは,第6章のQ&A「STADに至るまでの開発過程を知りたい」に答える形で詳しく述べられています.設問の一つひとつが精選されて,今回の出版までに至る16年の過程をぜひご確認ください.

 スクリーニングテストは,単なるチェックテストではありません.初めて出会う人と人との大事なコミュニケーションのスタートであり,言葉を紡ぐ人間の高次な脳機能を総合的に観察する機会です.初回面接では定型の質問をしながらも,その人の「病前の生活はどのようなものだったのだろう」,「病気やケガを負って今どのような心境なのだろう」,「コミュニケーションを阻害している最大の要因は何なのだろう」,「納得できる生活に近づけるためにはどのような支援が必要なのだろう」との問いを心に留めておくことが大切です.そのうえで,対象者の客観的な情報を得るために,シンプルでありながらも信頼性,妥当性のある数値化された指標が必要となります.

 今回の出版にあたり,荒木氏と時間をかけてディスカッションしたのは,人の精神活動の根源からコミュニケーションを見ていくことの大切さです.「意識を土台として,情動に左右されながら言語という高度な知的活動を行っている人間の全体像を捉えること」がスクリーニングの主眼であることをSTAD解説でお伝えしています.

 コミュニケーションの重要な要素である言語・非言語の能力をスクリーニングするSTADが,言語聴覚士を目指す学生や言語臨床に携わる方々の指標となることを切に願っております.

2018年6月吉日
小薗真知子